(屋根部、通り全体にムラ有り)
→母屋高さ調整、及び野垂木、野地板を取り替え。
(瓦老朽化 割れ浮き等多数有り)
→飛鳥瓦二号(本葺瓦)に新調。
(破風板及び懸魚、腐食及び傷んだ箇所有り)
→破風板及び懸魚、を取り替え。
「定専坊本堂 令和大修復事業」vol.20 ~最終回「感謝と報謝」~
振り返ると、平成30(2018)年6月18日に発生した大阪北部地震、同年9月4日に大阪を直撃した台風21号により大きなダメージを負った定専坊の本堂。
その直後から修復事業について本格的に検討されてまいりました。一時はコロナ禍の影響により計画中止も話し合われるなど紆余曲折もありました。
しかしながら「仏様を大切にしたい。次の世代にこのお寺を残したい。」との揺るぎない皆々様の想いから本日に至っています。感謝しかありません。
本事業を請負ってくださった有限会社錦天一建設様、瓦の葺き替えを担当くださった石野瓦工業株式会社様をはじめ、設計や足場、解体や左官、建具に仏具と、あらゆる場面にご尽力をくださった職人の皆様にもこの場をお借りして感謝いたします。
浄土真宗寺院の本堂には特徴があります。
それは外陣(参拝者が座るところ)がとても広く造られているということ。
日本古来のお寺にはこのようなスペースはありません。奈良の大仏様でおなじみの東大寺を想像してみてください。お堂の真ん中に御本尊がお座りになり、その周りを取り囲むように廊下が設けられています。これは僧侶が行に励むことを主たる目的として設計されているからです。
一方、浄土真宗の本堂は内陣(ご本尊がおられるところ)と外陣がほぼ同じ大きさです。これは、仏さまの願いを「キク」ことを主たる目的としているからです。
親鸞聖人は「聴聞(ちょうもん)」いう行為を大切になさいました。また「聴く」と「聞く」をつかい分けられ、
「聴く」は出かけていって聞く
「聞く」は聴いて知らされたことが来て心に受ける
と解釈され、「聴聞」を「ユルサレテキク シンジテキク」と示されています。
さらに「仏願の生起本末を聞きて疑心あることなし、これを聞といふなり」とお示しになって「阿弥陀様の本願を聞きなさい、そして疑いの心を捨てなさい、それが聴聞をする姿ですよ」と仰っています。
阿弥陀様の本願を仰ぎ、おかげさまの心をもって日々の生活に向き合い、ご先祖から脈々と受け継がれた本堂に込められた想いを大切にお念仏することが、浄土真宗のみ教えを拠りどころとする者の報謝の姿と言えるのではないでしょうか。
これからも定専坊の本堂は、気軽にお越しいただける「聴聞の場」として受け継いでまいります。
本事業にお力添えを頂きましたすべての方々に改めて感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
(令和4年8月15日 盂蘭盆会の様子)
「定専坊本堂 令和大修復事業」は予定していたすべての工程が完了し、御本尊である阿弥陀如来さまが元の位置にお戻りになりました。
遷座法要を皆さまと勤修することも考えたのですが、コロナ禍の影響を考慮して寺族のもので内勤めとさせていただきました。
すでにご案内の通り、8月15日には工事後初となる『盂蘭盆会法要・定専坊総永代経法要』を真新しい本堂で勤修いたします。
また、11月12日には本事業の『落成慶讃法要』などを皆さまと勤めさせていただく予定です(※詳細は後日案内)。
本堂は美しくすることが目的ではありません。そこに集い、皆さまとともにお念仏を慶び称える場所として、広く活用いただくことが大切です。
皆さまもどうか定専坊の本堂をお気軽にご利用ください。
大屋根の工事と前回ご紹介した向拝唐戸の取り付けが完了し、本堂の木工事はすべて終了いたしました。
見上げるとそこには美しい大屋根が静かに佇んでいます。
再利用された唐戸も昔の面影をしっかり残しながら、スムーズに動く吊戸になって本堂を守ってくれています。
さて、昨年の11月から始まった本事業の報告も残り2回(ちょうどvol.20)で終了したいと思います。
振り返ると長ったような、終わりが見えると寂しいような。
何はともあれここまで大きな事故もなくこれたことに安堵しています。
定専坊の本堂で以前から利用されていた向拝唐戸(雨戸)。江戸時代のものと考えられ、定専坊の門徒さまの間でも大切にされてきました。
事業の計画を進めるにあたり「この唐戸は残してほしいわ~」とのお声があり、大工さんに相談。「それなら再利用する方法考えます!」とのお返事をいただき実現するに至りました。
(お掃除で大切に拭き掃除いただいた以前の唐戸)
(欅材が利用され江戸時代以前のもの)
(良い雰囲気ですね)
今回の事業では欅で組まれた唐戸を一度分解し、つり戸に修復。これからも大切なご本堂を護ってくれることとなりました。
(吊り戸に生まれ変わりました)
※色は今から合わせていくようです。
本事業もいよいよ大詰めです。令和3年11月から始まった工事も9カ月が経とうとしています。
7月22日には足場が外され、久しぶりに大屋根の姿を見ることができました。なんとも美しくしばらく見惚れていました。
残る作業は建具の取り付けとなります。終わりが見えると少し寂しい感じもいたします。不思議ですね。
参拝者用のトイレはこれまで境内地から土足で利用できるよう設計されていましたが、古くなっていたこともあり、今回の事業にあわせて室内からバリアフリーで利用いただけるように改修いただきました。
近年、高齢化もありお寺にお越し下さる方の中にも脚に不自由を抱えている方も少なくありません。加えて、ご法座やお習字教室にお越しくださる皆さまにも清潔なトイレを利用いただきたいと考えていました。
行って良かったと思えるお寺であるために、皆さまと力を合わせて前進できたことを嬉しく思います。
今年の梅雨は記録的な短さだったとニュースを賑わしています。
そんななか瓦工事も終盤を迎えました。
瓦工事を担当いただいている職人さんに「棟が終わったらもう終わりが見えてきましたね」と話しかけると・・・
そうですね・・・「あとは大屋根の降棟(くだりむね)が4か所と隅棟(すみむね)が4か所、入母屋(いりもや)にも降棟(くだりむね)4か所あるんでね~」
とのことでした(笑)
本当に暑い中での作業に感謝してもしきれません。
皆さんはお寺の本堂と言ったらどんなものをイメージされますか?
お寺勾配のある高い屋根。そこには大きな鬼瓦となんだか不思議な飾りつけ。。。
このセットを見るとお寺らしさを感じる方も多いのではないでしょうか。
(鬼瓦)
※取り付け前の写真撮れなかった、、、
(懸魚)
(すべての鬼瓦に家紋の菊水)
※小さいサイズのものがまだありました。
ちなみに、なぜこのようなデザインなのか・・・
日本の伝統家屋のシンボルとして今に伝わる鬼瓦は「魔除け」。懸魚は水に強い魚の飾りを屋根に取り付けることで「火除け」の意味が。
古い蔵などの妻壁に「水」と書かれているのを目にしたことがありますが、あれと同じ意味が込められているのですね。
梅雨入りも間近ということもあり、瓦葺きの作業も急ピッチで行われています。
写真3枚目の半分だけ作業が終わった大屋根というのは珍しい光景ですね(笑)。なんか不思議な感じがします。
大屋根の修復は50年~100年に一度と言われています。
こんな光景二度と見ることはないのでしょう( ^ω^)・・・
ゴールデンウィーク明けから、いよいよ瓦葺きが開始されました。
はじめに基礎となる桟を格子状に打ち、そこに瓦を銅線で固定していく工法です。
そう!今回の工事では土台となる土を一切使いません。昔の家屋では瓦の下にどれだけ土を乗せたかが一種のステータスになっていましたが、最近ではやはり耐震性を意識して軽量化が進んでいます。
完成した際には従来の屋根に比べ重さが三分の一になるとのこと!!
梅雨入りを前に防水シートも敷き終えていただきました。
職人の方々の一糸乱れね動きに感激しながらいつも拝見しています。
このところ雨などの影響で大屋根の木工事は行われていなかったのですが、いよいよ大詰めです。
日本家屋のシンボルともいえる「破風」の取り付けが行われました。
(間近に見ると大きさに圧倒されます)
(専用の足場を組んで職人さん4人がかりで取り付け)
お寺の本堂と言えば「切妻」に大きな「破風板」、そして「妻飾」として「懸魚」を思い描かれる方も多いのではないでしょうか。
今回の工事では「国産ヒバ材」を加工いただき新調いただくこととなりました。
↑↑↑↑↑
今回の工事で知った言葉を一生懸命並べてみました(笑)
大屋根の木工事も終盤に入り、間もなく瓦葺きが始まろうとしています。
さて、以前にも少しご紹介をしましたが、今回の修復事業では屋根瓦の葺き替えや壁の修復などに加え、いつくるか分からない自然災害に備え耐震工事も行われています。
雨の日にはこうした室内の工事も並行して行うことで、工期の短縮にもご尽力いただいています。大工さんに感謝感謝です。
(柱の補強と耐震壁の設置)
(基礎部分の補強)
(屋根裏補強)
本堂の木工事も中盤に差し掛かってきました。
現在は小屋(屋根裏)を中心に作業がすすんでいます。補強の方法や作業の進捗とともに面白いお話しが聞けました。
「これは明治以降に入ってきた新しい工法ですよ」写真2枚目
(建築された当時の工法)
※棟に向かって柱がまっすぐ立っています。
(明治以降に入ってきた新しい工法)
※棟木を合掌つくりの柱で支えています。
定専坊の本堂は江戸時代のものです。
しかし、明治30年に淀川の河川工事に伴い現在の位置に移転することになり、その際にも修復がなされました。
このようなことから、棟をささえる柱は江戸時代の工法と明治時代に採用された新しい工法の二つがまじりあって大屋根を支えているそうです。
歴史を感じますね。
あるとき、
「中入ってみてください!」と大工さん。
「わかりました。行ってみます」と私。
これが大変・・・屋根の角度で登るのも大変。その構造の複雑さに足の踏み場もわかりません。何とかたどり着いたものの、大工さんの足腰の強さに改めてびっくりです。
新年を迎え1/6から工事も再開されました。
寒いなかでの作業に工事関係者の皆さまには感謝しかありません。
さて、この以下2枚の写真は本堂の基礎部分を撮影したものです。
そう。本堂の基礎部分は天然の石(束石)の上に乗っているだけなのです!!
しかもずれているのか今にも落ちそうなところもΣ(・□・;)
今回の修復事業では耐震補強も行われており、基礎の強化と耐震壁の設置が行われています。
「せっかくきれいにしてもつぶれてしもたら元も子もない」
ある役員会でのお言葉を思い出し、皆さまのお寺を想うお心に改めて喜びを感じています。
(基礎補強工事)
(耐震壁に改築中)
師走に近づき、寒さも日に日に増してきました。そんな中でも大工さんの作業は続いています。感謝感謝です。
現在は大屋根や本堂内陣の土台となる木材の改修・補強が行われているのですが、パッと目にして気になったのは至る所に使われている丸い木材・・・
現代の家などにはあまり見らせません。
大工さんに「丸い木材がいっぱい使われていますね??」と聞いてみると、昔は角材にするのに手間がかかったので基本は丸い木材だったと教えてくれました。
定専坊の本堂は江戸後期の建物。
丸い木材をみて時代の流れと技術の進歩を感じました。
(屋根の瓦がきれいに取り除かれました)
(古い木材(丸)と新しい木材(角)が混在。修復した時代によりこのような状況になったようです)
11月1日(月)から本格的に始まった工事は、足場の組み立てから瓦撤去へと進んでいきます。
毎日まいにち「早いな~」「すごいスピードでやらはんな~」との感想とともにすすんでいきます。
令和3年10月27日(水)・28日(木)に報恩講法要と遷座法要を勤修し、その翌日からすぐに仏具の運び出しを開始しました。
お寺に住まいをさせていただき40年以上になりますが、こんなに間近で御本尊に手を合わせたことも、何もない広い本堂を見たことも初めてです。
どこに居て下さっても変わることのない阿弥陀様のお慈悲を改めて感じることができました。
ご案内をしました通り、令和3年11月から「定専坊本堂 令和大修復事業」を実施します。工事期間は約6カ月から8カ月ほど(令和3年11月~令和4年5月頃)を見込んでいます。
その間ご本尊(阿弥陀如来)を書院にご安置し、仮設本堂として利用する予定です。
これまで通りお寺での法事や月参りにもご利用いただけますのでお気軽にお問い合わせください。
毎年、秋の時期には宗祖親鸞聖人の報恩講法要が勤修されます。今年はこの法要の際に「定専坊本堂 令和大修復事業 遷座法要」を併せて行います。
本事業にご協力を賜りました皆さま、当山に有縁の皆さまはぜひともお参りください。
また、春の永代経法要が延期になっていましたので、こちらも併せてお勤めします。
〇横玉山 定専坊
<宗祖親鸞聖人報恩講法要・永代経法要・定専坊本堂 令和大修復事業 遷座法>
日時:令和3年10月27日(水)14:00~16:00
<宗祖親鸞聖人報恩講法要・永代経法要>
令和3年10月28日(木)14:00~16:00
<宗祖親鸞聖人報恩講法要・定専坊本堂 令和大修復事業 御遷座法要>
講師:星野 親行 先生 本願寺派布教使(西法寺住職)
※各法座は感染対策を行い実施します。皆さまマスク着用のうえどうぞお参りください。
聞信徒の皆様には、日頃より麗しくお念仏ご相続のことと、お喜び申し上げます。また定専坊護持のため、何かとご苦労頂いておりますこと、この場を借りて改めてお礼申し上げます。
さて当山は蓮如上人ご勧化の旧跡として、また石山本願寺の梵鐘を伝承する名刹として、古くより地域の皆様に護持されて参りました。明治年間には淀川改修に当たって当地に移転し、その後も前々住職を中心として伝承されてきましたが、ご承知のように、楠住職のご往生と共に、しばらくの間無住の寺院として、存続を余儀なくされてきました。
昭和四十一年、前住職 山本佛骨がご縁によって当山に入寺させて頂きましたが、その折りには当時の復興委員の方々を中心として、大きな改修が行われました。五十五年前のことになります。
お気づきの方も多いと存じますが、瓦はそれ以前のものを、そのまま用いて吹き替えのみ行われ、今日まで維持されてきました。またいま屋根にも大きなうねりが生じつつあります。業者によると、梁などに修復補完の必要な箇所もあり、地震対策なども勘案すると、現在の工法で土を使わない方法での吹き替え、壁の強化などが提案されました。
令和2年より門徒役員の方々を中心に協議を重ね、門徒総会でお諮りするなどして、今秋よりこの大事業を実施することと致しました。
この間、会議の度に頭を悩ませてくださった役員の皆様、高齢化に加えコロナ禍の大変なかご理解をいただきました門信徒の皆様に改めて御礼を申し上げます。有難うございます。
五十年に一度の大事業になります。工事期間中はご迷惑をおかけしますが、なにとぞご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
定専坊 住職
山本攝叡
(一部分母屋の継手の位置に不具合有り)
→母屋下部に補強材を取り付け。
(小屋裏、束部分、貫、筋交、破損有り)
→貫、筋交を新調。
(小屋裏、桁梁に腐食有り)
→腐材の取り替え。